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振り飛車最強決定戦(前哨戦) in Qhapaq

プロ棋士の大半が居飛車を指す時代。コンピュータ将棋でも相手が飛車を振るとついガッツポーズをしてしまいがちですが、藤井銀河の爆誕や久保九段の王将戦での活躍など、振り飛車のポテンシャルはまだまだ底が見えていません。

本稿では、藤井猛九段のインタビューで先発の三本柱と言われていた三間、四間、中飛車のなかから、最強の振り飛車は何であるかを検証してみます。それと同時に、コンピュータ流の振り飛車の考え方について考察してみたいと思います。

 

1.選手入場

 本稿ではノーマル四間、ゴキゲン中飛車、32飛車戦法、角交換四間飛車に出場してもらいます(全て振り飛車を後手番とします)。誤差を真面目に削るには万単位で戦わせなければならないのですが、面倒だったのでノーマル四間以外は約500試合ずつです。お時間あるようでしたら、どれが優勝するか予想してみてください。

ノーマル四間飛車

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今なお絶大な人気を誇る、振り飛車の主役です。

 

ゴキゲン中飛車

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2000年代後半の後手番勝率の上昇に貢献した戦略の一つです。

なお、英語名称はCheerful Central Rookだそうです。

 

二手目32飛

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王座戦で羽生挑戦者が採用したことでとてつもないインパクトを

稼いだ戦略です。32飛車を嫌がり初手を26歩にする居飛車党も居るとか。

 

角交換四間飛車

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藤井銀河の二度目の升田幸三賞受賞の立役者。

なお、研究者界隈では藤井銀河の人気は羽生三冠をも凌ぐとかなんとか。

 

2.対戦結果

 ノーマル四間飛車:40.5%

ジリジリした駒組が多い。水平線効果からかノーリスクで穴熊を許すなどの人間ならやらない類の作戦負けをしやすい。

ゴキゲン中飛車:40.5%

超速37銀はあまりみない。居飛車側は5筋を守るのに使った金銀をそのまま玉の防御にも使えるのに対し、振り飛車側は41の金が最後まで浮くのが痛い。大駒交換から守備力の差で負ける展開が目につくが、居飛車急戦に毒されたQhapaqは割とそれに気付かない。

 

2手目32飛:37%

角交換四間飛車:37.5%

居飛車側からのコンピュータ特有の攻め将棋が炸裂しやすい。振り飛車(もとい美濃囲い)は角の打ち込みには確かに強いが、壁銀を繰り出しての玉頭攻めなどと組み合わせられると後手が何もできずにやられることもしばしば。戦形の再現性が少なく、見ていて目が痛くなる。

 

結果は、ノーマル四間≒ゴキゲン中飛車 > 32飛車≒角交換 となりました。渡辺竜王が最近後手番で採用しているゴキ中が強いのは予想通りでしたが、ノーマル四間飛車が強いのは驚きました。私個人は、ノーマル四間飛車が戦いにくいからこそ、他の振り飛車の手法が生まれた経緯からノーマル四間が一番弱いだろうと思っていました。

 

さて、偉そうに決定戦と宣ってますが、各々の試合の誤差は大きく、この順位はさほど当てになるものではありません。しかし、どうやら、序盤に角を交換する(2手目32飛はQhapaqだと殆ど角交換になる)のは損であるというのがQhapaqの見解ではあるようです。

# まあ、角交換系とそうでないのを足しても1000ちょいにしかならず、2σの誤差は抜けられてないのですが。

 

3.コンピュータが考える振り飛車の肝

大会結果では角交換系は散々な目にあっていますが、コンピュータは後手の角交換系を苦手としているかといえば、必ずしもそうではありません。

過去に行った振り飛車定跡の研究では振り飛車側は相手の陣形が自分の陣形より薄いと見るや、自分から積極的に角交換を持ちかけています。

これらのデータから、コンピュータが考える振り飛車の肝は飛車を動かす手損を、形の良さ(美濃囲いは角打ちに強い。角が相手の玉を直接睨んでいるetc)で埋め合わせることであると予想ができます。

ノーマル四間の45歩のように、自分が望んだタイミングで戦いを始めることが大事であり、角交換で下手に居飛車に攻撃力を与えてしまうとむしろ困るというわけです。

 

4.次回予告

本大会で優勝したノーマル四間飛車やゴキ中を以てしても、コンピュータ将棋の後手勝率が47-8%程度であることを考えると、振り飛車はかなり苦しい状況と言えます。しかし、本稿の実験を通じて振り飛車の肝は、手の損を形の得に変換してから開戦するという、開戦のタイミング制御であることが示唆されました。

 

そして次回、後手番平均勝率ライン(47%)に匹敵する不利じゃない振り飛車が遂に爆誕します。(現在手元PCで検証中。このまま行けば80%ぐらいの確率で平均ラインに届きそう。)

 

長かった振り飛車の冒険の一つの終点とも言える戦略が何であるか、皆様是非予想してみてください...