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アピール文から読み解くWCSC27の見どころ(大合神クジラちゃん編)

久々のシリーズ物として、WCSC27に参加しているソフトのアピール文を、私、Qhapaqの開発者が読解/解説していきたいと思います。本シリーズを通じて、皆様がコンピュータ将棋を好きになってくれれば、そして、人工知能の織りなす科学を楽しんでいただければ幸いです。

 

前回記事:アピール文から読み解くWCSC27の見どころ(うさぴょん2’TURBO編) - qhapaq’s diary

 

注:以下の考察はQhapaq開発者の予想です。開発者に確認をとっているわけではありません。あくまで参考として楽しんでいただけると幸いです。

 

・オープンイノベーションの先駆者 大合神クジラちゃん

大合神クジラちゃんのアピール文:

http://www2.computer-shogi.org/wcsc27/appeal/GodWhale/appeal.pdf

aperyの公開以降のコンピュータ将棋界において、第三勢力としてのオープンイノベーション勢を無視することはできません。最新のstockfishをaperyシリーズに組み込んだsilent majorityや、既存定跡を狙撃するまふ定跡、mizar氏による定跡データベースの拡張などが一例です。

その点に於いてクジラちゃんはニコニコチャンネルを駆使したコミュニティー作りと、共同開発を続けており、オープンイノベーション勢の先駆けとも言える存在です。

以下、クジラちゃんが本大会をどう盛り上げてくれるのか予想してみたいと思います。

 

・合議制の難しさ

クジラちゃんの探索部は視聴者の数だけ火力が出るわけですが、アピール文によれば与えられた局面から1手分岐した状態で割り振る仕様だそうです。読むべき局面から1手進んだ状態を読ませ、それらを統合して指し手を決めることで、読みの深さを実質1手深くすることができます。

クジラちゃんの視聴者数的には、2手以上深く読ませることも可能だとは思いますが、手の割り振りが面倒(将棋では合法手の数は局面に応じて激変する)なのと、ユーザとの接続が切れた時、他に当該局面を読んでいるユーザがいないと読み全体が死んでしまう危険があるので、これは茨の道であると言えます。

クジラちゃん式の合議将棋には幾つかの興味深い問題があります。例えば、貧弱なPC2台と屈強なPC1台で局面を読ませた際に、貧弱PC2つの意見と屈強PCの意見が合わなかった時、何方の意見を採用するべきでしょうか。

他にも、幾らたくさんユーザがいても、皆が全く同じ局面を読んでしまえば合議制は意味をなしません。それを避けるには評価関数に乱数を加えるなど、読み筋に多様性を与える必要があります。スペック、数ともに不確定な状態でどのように手の分散具合を制御すればいいでしょうか。

 

・スペックはXeon以上、apery未満と予想

合議制の魅力を諦める(ユーザPCのスペックを測定し、最も強いPCの意見だけを採用する)なら、ユーザが使ってくるPCの中で最も強いPC達+depth1程度の読みができることになります。ユーザのPCのスペックや、クジラちゃんがどういった合議制をしてくるかは謎ですが、12スレッド級のPCを各々の手に割り振るぐらいはできると予想しています。

12スレッド+depth1なら、凡そ、大将軍やNDFのハードと同じぐらいの読みができるのではと思います。逆に巨大なハードを複数台連れてくるようなaperyのような相手には視聴者の数でNPSを稼ぐだけでは探索速度で勝つのは難しいと思います。

 

・Qhapaq的総評

クジラちゃんの立ち回りはハードを大量にこしらえたsilent majorityに近いと予想しています。クジラちゃんがどれだけ勝てるかは加速するオープンイノベーションの強さ、同時に、数の力に抗おうとする開発者個々人の強さをみる良い試金石になると思います。

 

余談ですが、QhapaqはクジラちゃんにWCSC26で2回戦い2回負けています。生放送でひたすら「艦これみたいに評価値に応じてマスコットの服が脱げるほうが面白い」と言いまくった記憶がありますが、果たして実装されたでしょうか。楽しみです。