将棋を知らない人にも話題を振りやすい棋士で打線を組んでみた

将棋ファンにとって将棋の布教は野望であり義務でもあります。しかし、観る将が普段楽しんでいるような将棋用語は、将棋を見ない人にはほぼ通じません。「この前の王将戦で軍曹が角換わりからの千日手をまたやったんだ」と嬉々として語ろうとも、聞き手の脳裏に千日手と言う単語が残れば良い方でしょう。私自身も将棋の面白さを友人に布教する上で幾度も悔しい思いをしてきました。

 

本稿で紹介するのは私自身が家族、友人、同僚、謎の留学生に将棋を布教し続けることで体得した将棋の布教術です。今回は布教の基本は人物伝ということで、話題にしやすい棋士をネットでおなじみの打線を組む形式で紹介していきます。私はswitchの聡太を未だに攻略しておらず、香川女流のコミケ本を持っていない末席観る将ではありますが、幾多ものプレゼンラップバトルを制してきた経験をここにぶつけてまいります。

 

それでは、「よろしくお願いします」

 

※:本稿はネタ記事です。また私の趣味がかなりでていることをご留意ください

 

1番(二): 加藤一二三九段

将棋布教打線はひふみんで始まる以外ありえません。将棋布教でひふみんを抜く奴がいたら「ウノの言い忘れに並ぶ凡ミスだ」とでも言ってやりましょう。1分間でみかんを3個食べたという謎の武勇伝、中学生で棋士になり授業にでられない彼のためにノートを届けてくれた同級生と結婚したというラブストーリー、将棋盤の位置が気に入らないと対局相手と揉めてくじ引きをした逸話など話題の引き出しが多種多様です。またバラエティーを始めとしたテレビの知名度が高いため、将棋の話をする雰囲気じゃなくなったときに容易に撤退できるという他のスタメンにはないスキルがあります。ひふみんが生涯愛した棒銀の弱点は攻めが失敗したときに銀の扱いに困ることだというのに

 

2番(一): 香川愛生 女流四段

このダイバーシティの時代に女流棋士を入れ忘れるのはチョンボに等しい重罪です。布教の観点からみた香川女流の強みは才色兼備に立脚した圧倒的な待ちの広さです。コスプレ、コミケ参加、女流タイトル経験者、クイズ番組出演、ドラマ出演、ゲーム化、社長就任と、この世界の森羅万象に食い込ませられるだけの持ち駒を持っています。森羅万象番長です。他の棋士との話題広げやすく、女流棋士ならテレビでの共演歴がある竹俣紅女流初段、コミケなら一緒にコスプレをやらされた糸谷八段とこちらも手数に困りません。ドルオタと思われても困るので香川女流の話を長くするのは個人的には避けたいのですが香川女流の話題を握り込んでおくと、赤ドラを持っているかのような安心感が得られます。

 

3番(中): 羽生善治九段

人類史上最も有名な将棋プレイヤーと言っても過言ではないでしょう。将棋盤が9x9であることや飛車と角のどっちが右側かよりも有名なのは勿論のこと、下手したら桂馬や角よりも有名かもしれません。羽生九段ぐらいのバリューがあれば「羽生善治はAI将棋をどう考えているのか」など直接将棋の話に持っていくことすら許されてしまいますこれが「深浦将棋はなぜ地球を代表できるのか」とかだったら「そもそも深浦って誰」となってしまいます。私としてはこっちのほうが聞きたいぐらいですが、悲しいかな、知名度は大事なのです。おもしろ方面の逸話も(奥様の協力もあって)レパートリー豊かです。個人的には盤面に没頭しすぎてアイスを溶かした話や、何故かチェスで日本一になったことがある話などが使いやすくて好きです。ジャニオタと思われても困るのだが嵐にしやがれのクイズデスマッチに辛勝して「大分手加減してもらった」と正直に言っちゃう話も好き

 

4番(左):藤井聡太二冠

今の将棋界の頂点です。藤井二冠の話題を提供できない将棋布教者なぞエラのない魚も同然です。藤井二冠を布教する最大のメリットは直接将棋を観ることをオススメできることです。4年連続で勝率が8割を超えている、史上最年少タイトルを達成しているなどの逸話を餌に「今から藤井ファンになれば推しが勝ちまくる姿を見られる」と断言できるのは令和最強の棋士ならではでしょう。勿論、布教の際にはおもしろエピソードも用意しておきましょう。初心者向けの将棋サイトに異常な難しさの詰将棋を提供したこと、色紙の偽物が出回り警察から問い合わせを受けた際に「持ち駒の数が違うから偽物です」と看破したこと、師匠が色紙の詰将棋のネタに困っていたときに「一題提供しましょうか」と冷やかしたことなど、詰将棋周りが使いやすくておすすめです。まあ、その詰将棋の大会も五連覇とかしてるんだが

 

5番(右):木村一基九段

将棋界で最も愛されているおじさんです。将棋を観ない人が木村九段を知っている確率はその人が石鹸を漢字で書ける確率とほぼ変わらないでしょう。しかし、七度目の挑戦にして悲願の初タイトルを手にした時の物語は予防接種並みの確率で一度話せば覚えてもらえます。なにせ最終戦の陣屋での現地解説は、羽生、藤井が絡むようなビッグタイトルを超え、史上最大の入場者を叩き出すぐらいファンから愛されているのです。タイトル奪取の瞬間なんてファンたちが解説場で泣き出すぐらいファンから愛されているのです。なんなら私もネット越しに泣きました。この物語には将棋は強さだけじゃないということを伝える力があります。そして、ファンに愛されるだけの面白さと真摯さを木村九段は持ち合わせています。木村九段のトークの面白さはファンには有名ですが、視ない将相手にするなら、大判解説で「藤井さんはベテランの人が、そろそろ間違えるころだろうと考えたことはありますか?」と藤井二冠に無茶な質問をした逸話あたりが使いやすいです。

 

6番(指):永瀬拓矢王座

今の将棋の四強の一人にして、とりあえず「根性」を見せておけば最低限の笑いが取れるという安定感があります将棋棋士がどれだけ将棋が好きかを紹介する上でもこの上ない人材です。大晦日に連続で9試合を行って年を越した挙句、終電がなくなったから朝まで誰か将棋やりませんかと解説の人を誘ったとか、毎日10時間ぐらいやれば誰でも棋士になれると豪語したなど逸話の枚挙に暇がありません。永瀬王座の布教をするときには川崎屋の布教をするのも忘れないようにしましょう。

 

7番(三):先崎学九段

うつ病九段を読め。電子書籍が擦り切れるほど読め。宗教の歴史が示すように、布教を成功させるにはインテリの取り込みが不可欠です。そしてインテリに将棋を刷り込む上でうつ病九段は最強の本です。東大の学生保健センターにいくと精神科はメチャクチャ充実してます。どうか察してあげてください。うつ病九段は、頭脳労働者がうつから復活するというだけの本ではありません。作品の至るところに将棋への思いが散りばめられています。この本に感動した東大生が将来官僚になった暁には、将棋文化の維持に力を貸してくれること間違いなしでしょう。将棋なんてAIが人間を超えて終わった遊戯と嘯く輩に将棋の深さを叩き込んでやりましょう。

 

8番(補):米長邦雄永世棋聖

人は必ずしも良い話だけを聞きたいわけではありません。将棋布教にちょっとブラックな要素を入れたいとなれば、米長永世棋聖は外すことが出来ません。会長再就任の際の写真をダブルピースにしたという強烈なエピソードをしても、米長伝説ではギリギリ補欠に入るか入らないかぐらいでしょう。カッコイイところで言えば自分にとって消化試合でも相手を全力で負かしにいく米長哲学、解りやすいところで言えば、数えるのもバカバカしくなるぐらい沢山ある全裸系の話。よりブラックなところにいくなら株で有名な桐谷先生との話やマグロ名人戦におけるネットバトルとかが良いでしょう。編入試験や人間 vs AIのコーディネータとしての腕前も素晴らしく、われ敗れたりもまた人に勧めたい名著です。まあ、個人的に一番好きなエピソードは天国の「米長先生」と言われるたびに「地獄定期」というレスポンスが何処からともなく帰ってくることだが

 

9番(投):渡辺明名人

現名人です。観ない将の人たちは中学生棋士のことを教皇と似たようなものだと思っているフシがあるので藤井聡太の先代、羽生善治の次代の中学生棋士だよ」と紹介すると話が通りやすいです。中学生棋士の中で唯一ブログをやっており、奥様の漫画を通じても将棋に対する考え方を色々語ってくれています。渡辺名人を通じて将棋を普及する際のコツは、将棋や渡辺名人ではなく、将棋の渡辺くんを売ろうと考えながら語ることです。「4人目の中学生棋士にして今の名人なのだが奥様が書いている漫画がめっちゃ面白い。具体的には...」という枕詞を練習すれば貴方も立派な宣教師です。ちなみに文春砲周りの話はブラックな話題が好きな人にも全く受けません。完全に私情ではありますが、私は一致率のチェックにQhapaqを使ってくれてなかったことを少しだけ根に持っています

 

【最後に】

というわけで、本稿では一般人に話題を振りやすい棋士を紹介してみました。将棋ファンであれば打線に漏れた方々についても無限に語らうことができることでしょう。例えば新聞の話題がでてきたなら「深浦九段がタイトルを取ったときには地元で号外が出た」とか「菅井八段は対局の際は未だに岡山から未だに通っており、岡山の新聞も藤井フィーバーだろうが何だろうが菅井八段の話題を優先して報道する(ソース紛失)」とか「香川番長は社長として日経新聞にでたことがある」とかとか。

好きなことを語る上でルールなんてありません。ただ、布教をするからには信者を増やしたいのもまた真理です。本稿が皆様のハッピー将棋布教ライフのちょっとした手助けになれば幸いです。

 

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将棋連盟も認める由緒正しい喜び方。米長永世棋聖の画像を使うのに若干抵抗があったのでsdt5の決勝トーナメントでようやく先手を引いた時のチームメンバの写真を流用