ダニング=クルーガー効果によるwebイキり対策とその誤用

ダニング=クルーガー効果とは、能力の低い人物が自らの発言・行動などについて、実際よりも高い評価を行ってしまう認知バイアスのことです。

ダニング=クルーガー効果はyoutube地方でよく見るwebイキリ芸人に対する防衛術から、エンジニア同士の奥ゆかしいコミュニケーション(*)にも使える非常に汎用性の高いものです。発見者の二人はその功績から2000年にイグノーベル心理学賞を受賞してもいます。

(*) 「完全に理解した」という言葉を殆ど理解していないという意味で使ったり、「チョットデキル」という言葉をその分野の第一人者であるという意味で使うなど

 

しかし、このダニング=クルーガー効果。多くの人がその効用を勘違いしています。いや、厳密には、勘違いをすることで勘違いが勘違いじゃなくなっているのですが......

そこで、本稿ではダニング=クルーガー効果をもう少し深堀し、より適切なwebイキリとその防衛術を模索していきます。

 

ダニング=クルーガー効果を吹聴する人間の勘違いを正すために、貴方が言うべき言葉は至ってシンプル。「ダニング=クルーガー効果は君が期待するほど強力なものじゃない」です。

これは、原著論文を読めば確認できます。

論文ではユーモア(*)、論理思考、文法、論理パズルの4つのスキルに関するテストを行い、自分が全体の上位何%ぐらいに居るかを予測してもらっています。その結果がこちらです。横軸が実際の順位(右に行くほど高スキル)、縦軸が自己申告したもの(上に行くほど高スキル)です。


(*) ジョークの面白さの評点がコメディアンの評点にどのぐらい近いかを測定したらしい。

 

【ジョーク】

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【論理思考】

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【文法】

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【論理パズル】

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確かに、スキルがない人ほど自分のスキルを過剰評価しがちという傾向はあります。しかし、ダニング=クルーガー効果を画像検索すると往々にして出てくるような、謙虚化(自分のスキルが足りていないことを自覚して自己評価が下がる)は殆ど発生していません(実験協力者の人数が100人程度であることを加味すると、誤差の範囲と言えるレベルです)。それ故に、謙虚化については原著論文では殆ど言及されていません。

 

謙虚さの重要さを語る上でダニング=クルーガー効果は非常に便利な道具です。きっとyoutubeセミナーチャンネルでも使われているでしょうし、そのチャンネルを批判する人にも使われていることでしょう。

が、用法として間違っています。その手の輩を見たら言ってやりましょう。

 

「君はダニング=クルーガー効果の理解が足りていないから過剰に信頼しているのかも知れないが、ダニング=クルーガー効果は言うほど強力ではない。私ぐらいになってくるとダニング=クルーガー効果などとおいそれとは言えないよ」......

 

ちょっと待て。この言い回し、どこかで見たことがあるぞ......

 

ネット上でよく目にする方の、ダニング=クルーガー効果やん

 

(ここからは完全に私の妄想です)

 

ダニング=クルーガー効果の理解度に対する自己評価。原著の実験よりも激しくダニング=クルーガー効果を起こしているのではなかろうか。

そして、ネットに拡散される過剰広告されたダニング=クルーガー知識を信じる人が増えれば増えるほど、ダニング=クルーガー効果の理解に対するダニング=クルーガー効果はネット住民が想像するようなダニング=クルーガー効果へと近づいていく。その暁には「ダニング=クルーガー効果は弱い」と主張する私のほうが間違っていることになる......

自分自身を実験台に完成する理論とは。ダニング=クルーガー効果、恐るべし。